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登場人物すべての性根と喜怒哀楽を語り分ける太夫の語り、多彩な音色で人形芝居全体を支える三味線、長年かけて磨かれてきた三人遣いの人形の繊細な動き、三者の織りなす完成された表現が古典の魅力です。
先人たちが残してくれた古典を楽しむだけでなく、現代を生きる私たちも新たな古典作品を生み出す努力をする必要があるでしょう。徳島では、新作浄瑠璃の制作や、音楽、舞踊、朗読など他のジャンルとのコラボレーションにも取り組んでいます。
徳島には、神社の境内に建てられた人形芝居の農村舞台が全国で最も多く残っています。昔ながらの小屋掛け舞台も再現され、野外公演が今も盛んに行われています。棚田や段々畑、谷川の流れ、鎮守の森の緑など舞台を取り巻く景観や、鳥のさえずり、境内を流れる神聖な空気など舞台を取り巻く周囲の環境すべてを味わってください。
徳島の人形浄瑠璃は単なる芸能ではありません。農村舞台では五穀豊穣や家内安全を願い人形芝居が神様に奉納され、式三番叟や大漁祈願のえびす舞といった演目が大切に受け継がれています。また、箱廻しの人形遣いたちが 「三番叟廻し」で正月を寿ぐなど、徳島の人形には、生活に根ざした信仰の気持ちが息づいているのです。
農村舞台では、人形芝居の背景に使われる襖絵を次々に転換させるからくり機構が発達し、人形芝居の合間にひとつの演目として楽しまれました。 その最後には、地元の人が子どもの頃「隣村まで続いていると思った」という、遠近法で描かれた千畳敷の座敷が現れます。
全国を巡業した淡路の人形座や阿波の人形座、数百組に及ぶ箱廻し芸人たちの需要に対応するため、徳島は優れた人形師を多数輩出しました。今もたくさんの人形師が活躍し、全国各地から人形の修理や新作の注文があります。文楽の首(かしら)よりも大きく光沢のある塗りが、阿波木偶の特色と言われています。